ご依頼人
京都市内在住 50代男性 A様
父の相続登記をせずに放置していたら、相続登記をする前に母も亡くなってしまった
状況・ご相談内容
京都市内在住の男性A様からのご相談。
昭和50年代にお父様が亡くなっており、平成20年代にはお母様が亡くなっている。
お父様名義の不動産(土地2筆)があり、お子様はご相談者A様のみ。
お父様名義になっている土地をA様名義に変更したいが、費用をなるべくかけないで登記をしたいとのこと。
検討内容
今回のケースでは、お父様の相続(一次相続)が開始してから、遺産分割協議や相続登記を行わないうちに相続人であるお母様が亡くなってしまい、次の相続が開始されている(二次相続)、いわゆる数次相続のケースです。
お父様の相続である一次相続の相続人はお母様(1/2)とA様(1/2)のお2人です。そして、お母様の相続である二次相続の相続人はA様お1人です。
つまり、父の相続人である母の地位もA様が相続することになります。
一見、お父様名義の不動産をそのままA様に移すことができるように思えますが、今回のケースではそれができません。登記手続きでは、その不動産を誰がどのような原因で、どのような順番で取得したのかをきっちり認識できるようにして名義を移す必要があるためです。お父様→A様に直接変更してしまうと、二次相続のお母様の相続を飛ばしてしまうことになりこのルールを破ってしまうことになります。
この場合は、原則として、お父様が死亡したことでお母様1/2、A様1/2の登記を申請した後に、そのお母様の1/2の持分をA様に移転する2件の登記申請をしなければなりません。
しかし、通常の手続きで上記の登記をすると、登録免許税が2回分必要となり、相続登記に関する費用が余計にかかってしまうことになります。
当事務所からのご提案・お手続き
そこで、平成30年度の税制改正により設けられた免税措置(※)を利用して登記申請しました。
※租税特別措置法第84条の2の3第1項
「個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。」
つまり、最終の相続人に直接相続登記をすることができない数次相続であっても、この期限内であれば、「中間の土地の相続について登録免許税は課されない」ということです。
今回の土地の評価額は3000万円ほどだったので、この免税措置をうけることで、登録免許税4/1000にあたる12万円が免除されました。
今回のご相談ではこの方法でお父様名義からA様へ名義を変更することができ、無事ご希望通りの結果へと至っています。